「第50回 有馬記念」ダンスはうまく踊れない?
体調不良などの敗因が囁かれているようですが、
今回、ディープインパクト&武豊は充分に力を出し切った上での
敗戦ではないかと、私は考えます。
冬枯れした芝の上で6つものコーナーを回るうえ、最後の直線も短いという、
中山競馬場2500mコースで行われる有馬記念では、先行する馬が圧倒的に有利です。
スタートが苦手で、いつも後方からの競馬となるディープインパクトにとっては、
元々、非常に厳しい条件での競馬でした。
そこで武豊のとった作戦は、
①まずはいつもどおり後方に付けつつ、
②道中で徐々に進出していき、
③最終コーナーでは先行した馬達を射程圏に捕らえた上で、
④最後の直線でいつもの空飛ぶような末脚で先行馬達を交わしてゴールする。。。
このようなものだったかと思います。
これは、この不向きな条件のコースを勝つための最良の方法と思われますし、
ディープインパクトもそれに応えられる能力を持った優秀なサラブレッドです。
しかし作戦通りに力を出し切ったにも拘らず、彼らは敗れました。。。
そう、ここにまったく予想外に120%のパフォーマンスを発揮した馬が1頭、いたのです。
ハーツクライ。
彼も今までは、ディープインパクトと同じくスタートが苦手で、
後方から競馬を進めて、最後の直線で鋭い末脚で追込んでくるタイプの馬でした。
彼の母親を、私はよく覚えています。
アイリッシュダンス(アイルランド民謡のダンス)という名の彼女も、
やはりスタートが苦手で不器用な馬でしたが、
最後の直線で鋭く追込んでくる、素晴らしい瞬発力に魅了されて応援したものでした。
(※特に1995年オールカマーでのヒシアマゾンとの攻防戦は凄かった!)
彼女の息子であり、母の名にちなんで、
アイルランド民謡の曲名「The hearts cry」から名付けられたという
ハーツクライのレース振りもまた母と同じく不器用で、
そして同じく力強く鋭い末脚を持っており、長所も短所もそっくり、、
というよりむしろ強調されて、母から受け継いだかのようなその姿に、
面白さと親しみを感じておりました。
ところが、その母アイリッシュダンス譲りの不器用と思われていたハーツクライが、
今回の有馬記念では見事にスタートを決めて先行し、前から3番手でレースを進めたのです!
これには驚きました。まさかこの大一番でそんな芸当をやってのけるとは・・・。
しかも従来、慣れていない位置取りへの変更は、馬に精神的な負担を与えるため、
いつもの走りが出来ずに実力を発揮できない場合も多いのですが、
今回、ハーツクライは見事に最後まで、しっかりと走り抜きました。
彼はスタートが下手で追い込みしか出来ない、と思っていたのは、
実は単なる思い込みで本当は元々、先行できる資質と能力を持っていたのではないか?
そう思わせるほどの、鮮やかな先行策での走りでした。
そしてその先行策が、100%の力を発揮したディープインパクトに対して、
たったの0.1秒だけですがアドバンテージとなり、勝利に繋がったのだと思います。
『ダンスは上手く踊れない。』
それが遺伝だから?今までの環境がそうだったから??
いやいや、実はそう思い込んでしまっているだけで、
やってみたら意外とうまく踊れてしまうのかもしれませんよ?
そんなことを考えた、今年の有馬記念でした。
おめでとう、ハーツクライ!
しかし次のG1対決は恐らく京都コースの天皇賞(春)で、
ディープインパクトも武豊も、ハーツクライを目標にして作戦を考えてくるでしょう。
きっと今回のようにうまくはいきません。来年の再決戦がいまから楽しみです・・・!