「piece of heart」(1999年)

 この「piece of heart」、発売は1999年4月ですから、
「aria」(1999年10月)のちょうど半年前なのですね。
その「aria」とは違って、ジャケットやライナーノーツの写真は、
明るく女の子らしいものばかりで、とても可愛らしい感じです。
「aria」ではクールな大人っぽい写真ばかりでしたからね。
たった半年の間隔しかないのに、プロデュースの仕方が、
見せ方からしてこれだけ違うとなると、
アルバムの内容もどのように違っているのか興味深いです。


1.「今日街にでかけた」
 ・・・静かなメロディと切なく綺麗な歌詞です。
日常に通り過ぎていく一瞬一瞬の、儚さや大切さを思い出させてくれます。
笠原さんのイメージによく似合う、良い曲だと思います。


2.「元気だしてよ」
 ・・・イントロのヘンな声に一瞬ビビリましたが、
タイトルどおりに元気の出てくる、アップテンポの爽やかな曲です。
ホント、聴いてるととっても明るく楽しくなってきます!


3.「明日はお休み」
 ・・・うん、この歌詞で伝えたい雰囲気がわかる気がします。
「私は私を/お休みしよう」。なかなか良い言葉ですね。
このあたりまで聴いてきて、「piece of heart」というアルバムの
タイトル=コンセプトが、見えてきたような気がします。
なるほど、写真の雰囲気もアルバムの内容にマッチしていますね。


4.「凍りつきそうな夜に凍えそうな両手をひらいて」
 ・・・タイトル長いですね〜!Being系かGackt様かといった感じですが。
しかし、これはボーカルの感じが最高に良いです!!
ちょっと冷たい、高音を活かした突き抜けるような歌い方です。
少し「aria」の前半部分に通じるようなクールな硬さのある雰囲気の
歌声や曲調なのですが、でも少し種類が違って、その中にもどこかに
少しだけ温かみを残した、優しさを含んだ歌い方なのですよね。


5.「儚さの中で」
 ・・・静かな曲です。こういう歌声も、好きです。


6.「my prayer」
 ・・・「祈り」ですね。
壮大なアレンジと笠原さんのまさに祈るような歌声が心地よいです。


7.「missing you」
 ・・・エンディングっぽい静かな良い歌です。
ただ「あなたのこと なくしたの」という歌詞はそのまま過ぎて、
ちょっと浮いているような・・・。


8.「piece of heart story」
 ・・・人によって作詞の方法はいろいろあるのだと思いますが、
さだまさしは小説「解夏」の際に、作詞と小説の違いについて、
「作詞は頭で考えたストーリーを、メロディに乗るように、
しかも意味や印象の伝わるように、短く削っていかねばならないから難しい。
しかし小説は長さの制限無く書きたいだけ書けるので、作詞よりもやりやすい。」
みたいなことを語ってました。


 このアルバムのすべての作詞を手掛けた木本慶子さんも、
そういったタイプの方なのでしょうか。この朗読詞では、アルバム内の歌詞が、
削られた部分を補足するかのように、言葉を言い換えたり追加したりして、
別の角度から語られていて、とても興味深いです。アルバム本編の歌詞とともに、
これからもっと聴き込んで、歌詞の意図を深く理解していきたいです。


 このアルバムでは、特に2.「元気だしてよ」と
4.「凍りつきそうな夜に凍えそうな両手をひらいて」の2曲がとても気に入りました!


 全体的には、暖かくて静かな、笠原さんらしい良い雰囲気のアルバムという印象です。
半年後にリリースされた「aria」との比較でいうと、
「piece of heart」は従来からの笠原弘子の延長線上にある、
優しく柔らかく暖かな、といった印象ですね。
対して「aria」は、ちょっとした新境地で、
大人っぽくクールで硬質・透明な印象を感じるアルバムという感じです。


 でもどちらも、プロデュースの仕方こそ違えど、
完成度の高いとても良いアルバムだと思います!
1999年の一年の間に、これだけのアルバムを2枚もリリースするというのは、
並大抵のことではありません。すごく充実した年だったのだなあと思います。
昨日ふれた「Feel Happy Together 1999」もこの年ですしね!


 この頃のように、笠原さんが充実した音楽活動をして下さる日々が、
再びやって来て欲しいと、心から祈り、願います・・・!